桃を割っても桃太郎はいなかった

昔、川を挟んで両岸に仲の悪いおばあさん二人がいました。

 

ある日、左岸のおばあさんが川で洗濯していると、上流から大きな桃が流れて来ました。

おばあさんといつもつるんでいたカワウソ達もそれに気付き、

「おばあさん、あの桃を切ってごらん。可愛い桃太郎が中にいるよ。右岸のばあさんに見せつけてやりなよ。右岸のばあさんはきっと腰を抜かすに違いない」

とけしかけます。

 

 おばあさんもそれはいいことを聞いたとばかりに、洗濯をほったらかして桃を取ろうと川の中へざぶざぶと入って行きました。

カワウソ達にも手伝って貰い、大きな桃を岸に上げると、

「じゃあ切るよ」

と左岸のおばあさんが、カワウソが持っていた包丁で桃を切ったのですが、

「えっ! なんで? なんで? なんで?」

おばあさんは口から泡を吹きながらへなへなとその場に崩れ落ちました。

何と桃の中は、空っぽだったのでした。

 

「桃太郎がいるって言ったよね」

おばあさんがカワウソに確認すると、

「いゃあ、いるような気がしたんだが」

カワウソはすました顔でいいました。